はじめに
B2B企業では、技術部門の方が営業部門に異動になることは珍しくありません。しかし、実際に自分がそうなったら、いきなり営業現場に行ってどのようにしたらよいかわからずに困ってしまうという不安があると思います。
アルゴマーケティングソリューションズでは、このような方や、技術部門に限らず他部門から異動されたばかりの方、あるいは新入社員の方に向けに、「営業基本のキ」と称して、営業マナー研修を行ってきました。その中で皆様の要望が多いテーマをこのコラムで述べていこうと思います。
技術部門にいらした方なら、お客様の要求に答えるだけの商品知識、技術知識はあるので、あとはお客様のところに行くときの基本的な考え方やふるまい方を身につければ、最強の営業担当者になります。それは単なるテクニックを身につけるということではありません。なぜそういう考え方やふるまい方が必要なのかを理解すればよいのです。日本独特のビジネス習慣もありますが、米国やヨーロッパ諸国でも多くの似たような状況に面してきました。大事なのは人と人をつなげるという意識を持って仕事をすることです。技術営業を約20年やってきた経験をもとに現実感のあるお話しをお伝えできればと思っています。
たかが挨拶、されど挨拶〜お客様への最初の挨拶
初めて会う人に、最初に元気よく挨拶をするのは、誰でも少々躊躇するところがあるかもしれません。しかし、営業となると話が違います。これは仕事なのですから、きちんとしなければなりません。特に今まで技術部門にいた人にとっては、この最初の挨拶は、たかが挨拶、されど挨拶で、恐怖に近いものがあるかもしれません。そういうときは、「役者になった」と考えるしかありません。そう、これは仕事なのです。そう割り切りましょう。
これは何も日本に限ったことではありません。アメリカでも中国でもイタリアでも、営業の人とエンジニアの人は挨拶が違います。たとえば、私はアメリカのお客様(仮にC社とします)が開催するサプライヤー向けのイベントに、年に一回参加します。イベントは数日かけて行われ、取引業者が集まってC社の各部門の方針を聞きます。各サプライヤーの営業マネージャー以上の人たちが総計300人以上集まっており、このパワーときたら、始まる前からものすごいものがあります。とにかく笑顔と握手と大きな声と笑い声で包まれるのです。
一方、C社が会議室を借りて個別の技術展示会をやったことがあります。そのときは、来訪者はエンジニアです。みなさん、とても静かです。みなさん、いい人たちですが、必ずしも笑顔があるわけでもなく、もっぱら技術的な内容に興味があるので挨拶もそこそこに、技術の話だけです。それでよい世界です。
そんなエンジニアの方が何かの拍子に営業部門に異動になったのですから、これは世界が180度違うでしょう。さて、ここをどう乗り切るか。そんなに難しいことはありません。いくつか気をつけておくべきテクニックをしっかり事前に準備して臨めば、あとは「これは仕事だから」と自分に言い聞かせてその役割を演じればよいのです。そのコツを述べますが、これは本当に、実は当たり前のことです。「なーんだ、そんなことか」と言いながらも、今一度意識してみてはいかがでしょうか。
1. 声を大きく、通るようにする
自分の性格が暗い、明るいは関係ありません。また、相手のお客様は必ずしも、というか多くのケースの場合、最初から好意的に受け入れてくれるわけではありません。氷のような雰囲気のケースも多々あります。そんなとき、暗く、何を言っているかわからない挨拶では、取引に対する積極的な意欲がその場から生まれるはずがありません。大きな声であいさつをして、罰金をとられることはありませんから、思い切っていきましょう。
2. 付き合いが長くなったら、なおさら挨拶に気を配る
最初は大きな声できちんと挨拶をしていたのに、付き合いが長くなるにしたがって、次第にいい加減な挨拶しかしなくなる人がいます。これをお客様は敏感に感じるということも忘れてはいけません。「親しさを表現する」のと「なあなあで仕事する」のは根本的に違います。たとえどんなに親しく、信頼関係が築けたとしても、挨拶は丁寧に行いましょう。ある人は、いつでもどこでもどんなお客様でも、面会の前にまずそのビルのトイレに行くといいます。身だしなみを整えるのはもちろんですが、鏡をみて顔を平手で2、3回たたくそうです。それにより、常に気を引き締め、切り替えをしているのです。プロとかエキスパートというものはそういうものです。
3. 挨拶は最上級の笑顔とともにおこなう
この点については、アメリカでのビジネスで学ぶことは多くあります。アメリカのエグゼクティブに会うといつも感心するのは、それまでの表情から一転して、挨拶するときは「ニカッ」と笑ってこれ以上ないぐらいのスマイルを作ります。本心かというと決してそうではないこともあると思いますが、それがごく自然なふるまいとして出てくるように思います。この「ニカッ」は、日本でも使えます。本人が大げさすぎると思うぐらいでも、ちょうどよいのではないでしょうか。安心してマネしてみましょう。きっとその場の雰囲気が自分のやりやすいようにぐっと変わるはずです。
最後に
人の印象は最初の4秒で決まると言われています。これはビジネスシーンに限ったことではありません。営業職になって、繰り返し元気よく笑顔で挨拶をする癖がついてきたら、それはきっと人生そのものにもプラスになるでしょう。
※こちらの記事は、「イノベーションズアイ」でもご紹介しております
営業担当になった技術者のための「あらためて知っておきたい」営業マナー
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